※本記事は、学校法人の経営構造を基礎から整理する連続記事の一部です。
積めない現実という出発点
資産形成は、学校法人が持続するうえで避けて通れない課題である。しかし、積むべきだとわかっていても、積み上がらない構造的な事情がある。授業料収入は学生数に依存して変動し、補助金は外部の財政状況に左右される。その一方で、人件費をはじめとする固定費は容易には下がらない。収入の不安定さと支出の固定性が重なるなかで、資産を積み立てる余力は構造的に生まれにくい。
積まなければならない理由
では、なぜ積まなければならないのか。答えは、将来に必ず発生する支出が、その年の収入だけでは賄えないからである。
退職金は教職員が在籍している間、少しずつ引当金として積み続け、退職時に一括して支払われる。施設設備は毎年老朽化し、いつか更新費用を必要とする。これらの支出は将来に発生するが、その根拠は現在の経営のなかに積まれていなければならない。資産形成の目的は、将来の支出と現在の資金を時間軸でつなぐことにある。
基本金という義務的な積立
この問いを踏まえると、学校法人の資産形成が二層構造になっている理由が見えてくる。一つ目の層は、基本金組入である。学校法人会計基準のもとで、法人は固定資産の取得時や計画的な資金確保の際に、基本金として計上することが求められる。積むかどうかを選ぶ余地はなく、制度の要請として組み込まれた積立である。第1号から第4号まで性格は異なるが、法人の裁量より先に働く仕組みという点で共通している。
特定資産という意志の積立
二つ目の層が、特定資産の積立である。こちらは法人が目的を定めて積み立てる、意志的な行為である。退職給与引当特定資産、減価償却引当特定資産、修繕引当特定資産——名称のなかに目的が書き込まれているように、どのリスクに備えるかという判断が積立の形になって現れる。
基本金組入が制度に応えることであるのに対し、特定資産の積立は、将来の支出を現在の決定として引き受ける行為だといえる。この層の厚みに、法人の経営姿勢が映る。
積立が示す時間軸
積めない現実があり、それでも積まなければならない理由があり、積み方には義務の層と意志の層がある。この構造全体を見渡したとき、資産形成が単なる財務管理の話ではないことがわかる。
特定資産が薄い法人は、将来の大きな支出に直面したとき、その支出を支える根拠が財務のなかに存在しないことになる。積立の連なりが、持続性の実質をつくる。「何のために積むか」という問いへの答えが、その法人が未来をどう引き受けているかを示す。
つなぐのは、あなたです。
